この記事では、駐妻・駐夫が副業をするために確認しなくてはいけないビザ(査証)の種類、就労許可(EAD)、駐在員の社内規定について、それぞれ紹介していきます。

帯同家族に支給されるビザってそもそも働けるの?

ビザの種類によっては働けるみたい
ビザ(査証)・就労許可(EAD)
ビザの種類‐就労可能な帯同者ビザ
駐在員は就労ビザのうち、H1‐3ビザ(特殊技能員、研修生等)、L1ビザ(企業内転勤)、または駐在・貿易・投資ビザ(Eビザ)を取得するよう会社から要請があります(そのほかのビザの種類の発給を受ける方は、ビザ申請のサイトを直接ご確認ください)。
駐在員本人がL1ビザを発給される場合、帯同者はL2ビザ(同行家族)が発給されることとなります。このL2ビザであれば、駐妻・駐夫は就労許可を求めて働くことができます。
また、Eビザ(E1-貿易駐在員ビザ、またはE2‐投資家、駐在員ビザ)を発給される場合、帯同者は同様のビザの発給を受けることとなり、Eビザでも、駐妻・駐夫は就労許可を求めて働くことができます。
一方で、駐在員本人がH1-3ビザを発給される場合、帯同者はH4ビザ(同行家族)が発給されることとなりますが、H4ビザでは、配偶者の就労は認められていません(子供の就学は認められています)。
≫アメリカビザ申請サイトはこちら

LビザかEビザだったら働けるのね

つまはL1ビザ、おっとはL2ビザだよ
就労許可(EAD)の必要性
さて、上記にて、L2ビザまたはEビザでは配偶者は就労許可(EAD-Emproyment Authorization Card)を求めることができる、となっています。従来は就労許可を申請して、必要な書類の準備・申請手数料の支払いをしたうえで、受領まで数か月間待つ必要がありました。
しかしながら、移民局がLビザおよびEビザはそれ自体に就労許可を有するという見解を固めたことで、LビザおよびEビザの配偶者ビザも同様に、EAD申請は不要となりました。
多くの会社が従業員の人手不足に悩む状況が続いているなか、米国税関・国境警備局(CBP)と米国市民権・移民局(USCIS)は、2021年11月12日、Shergill, et. al. v. Mayorkas訴訟を和解( litigation settlement )で終結することとしました。
この和解案により、L-1ビザ駐在員の配偶者(L-2ビザの方)およびE-1/E-2ビザ駐在員の配偶者は、EADカード(就労許可証)を取得せずとも、主たる駐在員の配偶者の「地位に付随して」就労することが認められることになります。
Dickinson Wright

EAD申請で時間がかかりすぎて働けないっていう人も多かったみたいだね

アメリカの手続き系は時間かかるよね
ポイント
- アメリカの場合、LビザまたはEビザであれば帯同家族は就労可能
- 就労許可(EAD)の申請は不要
駐在員の社内規定
単身赴任と家族帯同の場合の手当ての違い
帯同者に発給されるビザがL2ビザまたはEビザでさえあれば、ビザ上は、駐妻・駐夫は現地で働くことが可能です。では、駐妻・駐夫は現地で働く場合、駐在員の会社はどこまでサポートをしてくれるのでしょうか?
一般的な駐在員規定では、ビザの発給支援、航空券、着任・帰任手当(引っ越し費用等)、海外赴任手当(現地物価に合わせて調整)、家賃補助、車の支給、水道光熱費の補助、学習サポート(語学学校代補助)、などが記されていますが、単身赴任の場合と家族帯同の場合で手当の内容は異なります。
この際、帯同家族の定義として、働いていないことを条件として規定しているケースがあります。この場合、海外赴任で駐妻・駐夫が就労するなら、これらの手当ては単身赴任扱いになる可能性があります。単身赴任と家族帯同の各種手当をざっくり比較してみましょう。
副業をする場合にもし駐在員が単身赴任としての手当てしか受けられなくなる場合、その差額以上を副業で稼ぐことができるのか?という視点でも考える必要があります。
単身赴任 | 家族帯同(夫婦2人の場合) | |
往復航空券(ビジネス) | 100万円(50万円×2) | 200万円(50万円×2×2) |
着任手当一時金 | 25-50万円 | 50‐100万円 |
帰任手当一時金 | 25-50万円 | 50‐100万円 |
駐在員手当 | 150‐250万円/年 | 200‐300万円/年 |
私用車支給 | なし | 150万円相当 |
危険地手当 | 100‐200万円 | 200‐400万円 |
家賃手当(光熱水費含む) | 240‐300万円(20‐25万円/月) | 360‐480万円(30‐40万円/月) |
単身赴任手当 | 50‐100万円/年 | なし |
合計 | 690‐1,050万円 | 1,210‐1,730万円 |

単身赴任と家族帯同だと結構待遇に差があるんだね

もちろん会社や赴任先にもよるけどね
帯同家族が就労する場合の会社のサポート内容
もし会社が帯同者の就労認めてくれる場合(働いても帯同者とみなしてくれる or 単身赴任扱い)でも、帯同者のビザ発給サポートをしてくれるのかは確認が必要です。
駐在員が単身赴任扱いになるのであれば、帯同者のビザ申請の手続きなどもサポートされなくなり、ビザを取得することが困難になってしまいます。
個人として自営業等を営んでいてご自身でビザを取得できる方や、大学院への進学の準備をしていて学生ビザの発給を受けられる方であればなんとかなるかもしれませんが、そうでないと、ビザの発給を受けられないので、海外赴任に同行して海外に長期滞在すること自体が困難になってしまいます。

自力でのビザ取得は難しい、、、

ビザの発給支援はするけど、手当ては単身赴任扱いにするっていう会社もあるみたい
そもそもなぜ帯同者が就労することを社内規定で制限されるのか
少しおかしな話ですが、ビザ上は働けるのに、駐在員の社内規定で帯同者の就労が制限されている、ということになっています。これは、海外駐在を進めてきた日本企業が夫婦共働きを想定しておらず、帯同者分の海外赴任手当は、「妻が仕事を辞めてついてくる」ことが前提となっており、現地の生活で夫を支えるための支援金としての位置づけだったからではないでしょうか。
そのため、夫婦共働きで仕事を辞めないのであれば、会社としてそのサポートはしません、という判断になってしまっているのだと思います。
一方で、海外赴任手当は現地で日本と同程度の生活水準を維持するために支給されるものであり、配偶者の就労の有無によって判断されることではないのではないかと思ってしまいます。
今後は夫婦共働き世帯の増加もあって帯同家族の就労問題についてはより議論になってくるでしょう。
1.帯同家族の現地所得税申告のサポート範囲
帯同家族の現地就労を積極的または消極的に認めている企業のうち、申告書作成費用や所得税額など金銭的サポートを行う企業は1割以下と少ないものの、「申告書作成方法やベンダーを紹介」との回答は3割近くにのぼります。
2.帯同家族の現地就労を認めていない理由
回答者の9割以上が「家族ビザで入国しているため就労は認めていない」と回答。「税務面」「安全上の理由」との回答も約3割。
3.課題
帯同家族の現地就労を積極的または消極的に認めている企業のうち、約45%が「帯同家族の就労状況を把握しきれていない」と回答。就労状況を把握していないと、安全管理上のリスク、所得税申告漏れリスクなどが生じる場合があります。
また、前例がなく希望者が出た都度個別対応となっているという意見も多くありました。世界的なインフレによる生活コスト増や帯同家族のキャリア形成を重視する考え方が呼び水となり、今後は帯同家族が現地就労を希望するケースが増えると見込まれます。
EY調査、海外赴任時の帯同家族の就労状況、帯同する子の費用負担が課題

現状は例外の扱いなんだね

個別に相談するしかない!
帯同者が現地で就労するための交渉方法と留意点
社内規定を確認して帯同者の就労が制限されていると読み取れる場合でも、念のため、帯同者が就労することが社内規定に違反していることになるのか、会社の人事部と移民弁護士(必要に応じて)に確認をしてみましょう。
会社によっては、例外的に帯同者のビザの発給サポートや赴任手当を家族帯同扱いで支給してもらいながらも、帯同者の就労を認めてくれる場合もあるようです。
ここで大事なのは、あくまでも会社と交渉をするのは駐在員本人であるという点です。
ただでさえ駐在に向けた準備で社内調整などが忙しい時期に、配偶者の就労について各方面に相談し、場合によって条件交渉をするのは、就労を望む駐妻・駐夫ではなく、駐在員本人であり、少なからず負担をかけることになります。無理な交渉をすると駐在員の社内的な立場や人間関係にも影響を及ぼしかねませんので、夫婦でしっかりと話し合って、折り合いをつけることが重要です。

お願いします!

まかせんしゃい!
ポイント
- 帯同家族が働く場合、駐在員の赴任手当は単身赴任扱いになる可能性がある
- 単身赴任扱いになると、ビザの発給支援が受けられない可能性がある
- 勤務先との交渉は駐在員本人が人事部・移民弁護士と行う
まとめ

ビザの問題がクリアできたとしても、意外にも大きな壁となってくるのが駐在員の社内規定です。
社内規定に違反していることが後でバレると、海外赴任手当の返金を求められたり、強制帰国や社内規定にのっとった処分を受けかねません。
帯同者の働きたいという気持ちを尊重しつつも、現実的に働くことが可能なのか、単身赴任扱いになっても経済的にメリットがあると言えるのかなど、しっかりと条件を確認をして、夫婦で話し合って結論を出していくことが大事です。
ビザと社内規定のハードルをクリアできた方で、海外でフリーランスなどで働かれることを考えている方は、続いて税金と社会保険の扱いについて確認していきましょう。
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