この記事では、共働き夫婦が直面する海外赴任時におけるキャリア問題について解説します。
今の仕事を海外で続けられるのか、退職するしかないのか、休職できないのか、副業できるのか、といった駐妻/駐夫のキャリアの選択肢について解説していきます。

おっとは休職しながら副業してるよね

副業解禁ばんざい!
キャリア継続(単身赴任、帯同駐在、海外リモートワーク)
単身赴任
キャリア継続を前提に考えるなら、第一に上がってくるのが夫/妻の単身赴任です。
赴任期間が1~2年と決まっていれば、時差はありますがテレビ電話で顔を見て話すことができるのでなんとか耐えられるかもしれません。一方で、赴任期間が3~5年と長期にわたる場合は、家族計画などもよく2人で話し合ってから方針を決めていく必要があります。
メリット
- 夫/妻のキャリアを継続することができる
- 共働きなので、海外赴任手当分の世帯収入が向上
デメリット
- 夫婦のコミュニケーションのすれ違い(時差、物理的に会えない等)
- 頻繁に渡航しにくい情勢のため、中々家族に会うことができない
- 子なし世帯の場合は、家族計画に数年の遅れが生じる可能性がある

コロナもあるし気軽に渡航できないよね

悩ましいポイントだよね
帯同駐在(駐在員と同じ国・都市で働く)
難易度が高いですが、もし実現すれば共働き・ダブルインカムを実現しながら、妻/夫ともにキャリアアップができます。配偶者の海外赴任に合わせて、自社の視点が現地にあればこのようなサポートをする会社も近年増えてきているようです。
夫婦ともに語学に堪能で現地で働けるのであれば、一緒に海外で働くというのは魅力的な選択肢です。夫婦で同じ会社に勤めていれば、赴任時期・赴任期間にずれがでる可能性もありますが、実際に同じ赴任先に駐在している、というような方も周りに見かけます。
日本からの駐在派遣は難しいと言われた場合でも、語学力とスキルに自信があれば、配偶者の駐在開始後に直接現地オフィスに連絡して現地採用してもらう、という方もいるようです。
メリット
- 夫/妻のキャリアを継続することができる
- 共働きを維持できるかつ海外赴任手当分の世帯収入が向上(2人分)
デメリット
- 赴任時期・期間にずれが生じる
- 夫/妻それぞれ海外赴任手続きが必要(手続きが膨大)

ハードルは高いけどキャリアを継続するなら一番理想的な形だよね

同じ会社内で結婚した夫婦だったら会社にも交渉しやすいかもね
海外リモートワーク
もし現在の勤務先が許容してくれるのであれば、選択肢となり得ます。
海外リモートワークをするうえで、最も大きな壁はビザの種類と配偶者の社内規定です。帯同者ビザが就労可能なものなのか、社内規定上、帯同者の就労は認められているのか(帯同者が就労する場合の条件はあるのか)、という点を確認する必要があります。
現在の雇用形態を維持したまま海外でリモートワークをすることはできない、という会社がほとんどですので、その場合はいったん退職してフリーランスとして業務委託契約を結ぶことで実態としては現在のキャリアや業務内容を継続することができます。
メリット
- 夫/妻のキャリアを継続することができる
- 共働きなので、海外赴任手当分の世帯収入が向上
- フリーランスとして業務委託を受けるのであれば、他の副業も可能
デメリット
- 海外赴任手当や保険等のサポートを受けられない可能性
- 雇用契約から業務委託契約に切り替える必要がある
- 業務委託契約の契約交渉が必要。時差等の制約から収入は減る
- 現地での確定申告・社会保険への加入を自ら実施する必要がある

エンジニアの人とかは海外から働くってよく聞くね

業務経験とか専門知識がないときびしそう、、。
副業
近年は、副業も認め始められているので、もし休職しているのであれば、休職中に副業をすることは可能か人事に確認したうえで、もてあました時間を副業の活動に充てるもの良いと思います(退職している場合は会社への確認は不要)。
フリーランスサイトで海外リモートワークが可能な仕事を探す、現地のパートタイムジョブを探す、などと色々選択肢はありますが、ビザ・社内規定の確認、駐在員の勤務先との相談は必須です。
メリット
- 夫/妻のキャリアを継続することができる
デメリット
- 海外赴任手当や保険等のサポートを受けられない可能性
- 現地での確定申告・社会保険への加入を自ら実施する必要がある
<必要な手続き>
・海外での就労が可能か確認(ビザ・社内規定)
・海外での就労時の確定申告・社会保険の扱いについて確認
・現地で加入する社会保険の種類・金額等を検討

駐妻・駐夫におすすめの副業ってどんなの?

時差を利用した作業代行とかも流行ってるよね
その他の活動・投資等
ビザや社内規定の確認をせずとも気軽に始められる活動としては、ブログ・執筆活動、投資活動(株式・投資信託・仮想通貨)、翻訳などがあります。
ただし、ブログ・執筆活動で収益化(広告・アフィリエイト等)をしてしまうと収益が20万円以上出る場合は確定申告の対象となり、後で副業としてみなされてしまうリスクがあります。赴任期間中は収益化はせずに地盤固めをして、帰国後に収益化をするというのが安全でしょう。
投資活動の場合は、アメリカの場合は運用中の株式・証券等の種類と残高を夫婦合算での確定申告時に報告すれば、特段問題になることはありません。

ブログでそんなに儲けられるの?

プロブロガーの人たちってすごいんだなぁ
キャリアを一時断念(休職・退職)
休職(自己都合休職・特別休職)
「これを機に人生の夏休みとして駐妻・駐夫生活を楽しむぞ!でも帰国後は今の勤め先に戻りたいな」、という方は休職制度を利用しましょう。通常、休職制度には、病気・傷病休職、出向休職、公職就任休職、事故休職、自己都合休職などがありますが、配偶者の海外赴任に帯同する場合は、自己都合休職(特別休職などとも呼ばれます)に該当します。
ただし、会社によって、勤務期間に応じて自己都合休職の期間が定まっている場合(5年以上勤務していれば最大24か月など)もあれば、そもそも海外赴任への帯同は自己都合休職の理由としては認められない(帯同=退職)、といったケースもありますので、まずは会社の就業規則で休職の種類・取得要件を確認したうえで、人事部門に相談しましょう。
もしタイミングが合えば、出産休暇、育児休暇を組み合わせたり余った有給休暇を消化することで、海外に渡航してしばらくしてから休職を開始することで、渡航後数か月は日本から給与や育児手当をもらいながら生活をすることが可能です。
メリット
- 配偶者の海外赴任終了後、日本でのキャリアを再開できる
- 共働きなので、海外赴任手当分の世帯収入が向上
- 勤務日数で按分した分のボーナスももらえる
デメリット
- 配偶者の海外赴任に帯同することは休職要件として認められない可能性
- 赴任期間が取得可能な休職期間を超過すると退職扱いとなる可能性
- 会社の社会保険等は脱退しなければいけない(休職期間次第)

駐妻・駐夫生活を楽しむぞ!

海外駐在に帯同する=退職っていう考え方もだんだん時代遅れになりつつあるよね
退職(退職者再雇用制度の活用)
もし会社として海外赴任に伴う帯同を休職事由として認められない場合や、帯同期間が長期にわたる場合(休職期間を超過する場合)には、退職して海外赴任に帯同することになります。
この場合でも、近年では退職者再雇用制度を取り入れている会社も多くあり、「〇年以上の勤務経験がある場合かつ〇年以内に再雇用制度を利用した場合に限る」といった条件付きで、帰国後に再雇用することを認めているケースもあります。まずは会社の就業規則を確認して制度の有無を確認してから人事部門に相談しましょう。
メリット
- 長期の海外赴任に帯同しても元のキャリアを継続することができる
- 退職扱いとなるため、退職一時金や失業手当を受給することができる
デメリット
- 帰国後の転職等を考えている場合、職務履歴書に空白期間ができる
- 赴任期間の延長により再雇用可能期間を超えた場合、再雇用されない
- 再雇用時にも履歴書の提出やウェブテスト、面接のプロセスがある

三〇物産が配偶者転勤による退職者は退職から3年間(+2年)は再雇用をするってことで話題になったね

それでも休職じゃなくて退職しないとなんだね
キャリアアップを目指す(海外大学院・資格勉強)
海外大学院への進学
元々海外大学院を目指してTOEFLやGMATの準備をしていて、かつ配偶者の赴任先が自分が行きたい大学院がある場所であれば、これ以上のことはないと思います。
しかしながら、海外大学院に向けた準備をしていない方で、海外赴任が決まってからの数か月で準備をするということは非現実的かと思います。こうした方は、まず現地に自分が行きたい大学院があるか、入試期間はいつごろか、1年間だけのプログラムがあるか等を確認するとよいと思います。
もし1年間のプログラムがあれば、海外赴任期間が2年間だったとしても、1年間を勉強、残り1年間で修士号を取得、という選択肢も見えてくるかと思います。現地で1年間生活していればある程度の英語力向上も望めます。
単身赴任のメリット
- 海外大学院で学べるかつ現地でのネットワークを作ることができる
- 家賃や生活費を考慮する必要がない(配偶者の家賃補助等)
単身赴任のデメリット
- 配偶者の赴任期間と入学後のカリキュラムが合わない

本当にタイミングが良ければ海外駐在&大学院進学で最高だね

パワーカップルすぎる・・・
オンライン大学院で修士号を取得
配偶者の海外赴任を機に海外大学院で勉強をしたいけど、TOEFLやGMATの準備をしていない、現地の大学院に通うだけの学費を調達できない、という方は、オンライン大学院がおすすめです。
無料で講義を受講して単位認定してもらえる場合(Coursera)や、完全オンラインで修士号の取得までサポートしている大学院も数多くあります。
完全オンラインであればもちろん日本からの受講も可能なのですが、グループワークがある場合に時差を考慮する必要がありません。
また、学費も安く、一定期間内(5年間など)に必要単位を取得すれば修士号を取得できる場合もあるので、日本での継続的な学習を前提として、配偶者の赴任期間に合わせて自分も帰国することができるという点からも、もし海外大学院に興味をもっているのであれば、オンライン大学院は良い選択肢です。
単身赴任のメリット
- 大学院の選択肢も多く、学費が安く、受講時間の自由度も高い
- 帰国後にも学習を継続できるので、赴任期間内に卒業する必要がない
単身赴任のデメリット
- 完全オンライン授業のため、学生同士の交流は希薄になる可能性

駐在員でオンラインMBAに申込んでる人もいるよ

学費も安いみたいだし申し込んでみようかな
資格勉強
赴任期間中に何か資格の一つでも取って帰国したい、という方も多いと思います。
米国公認会計士であれば、勉強期間1年半‐2年間程度で取得が可能ですし、日本の予備校も海外居住者向けにサービスを提供しているので、海外に居ながらにして日本語の教材を用いて・オンライン授業を受けながら勉強を進めることが可能です。休職・退職をしながら、この帯同期間を活かして将来的なキャリアアップにつながることをしたい、という方には資格勉強がおすすめです。
特に、元々資格勉強をしていたものの、日常業務に追われて勉強時間が確保できなかったという方は、これを機にまとまった時間を確保できますので、学習を再開してみてはいかがでしょうか。
メリット
- 大学院と比較して安価。赴任期間中に資格取得が可能
- 海外にいながら、日本語の教材・授業を受けて勉強することが可能
デメリット
- 会計・経理の経験がない人は学習期間が多めに必要な可能性
- 試験自体は英語で行われるので、一定程度の英語力も求められる

おっとは教材だけ買って何年も放置してるよ

これを機に勉強を再開しよう!
まとめ

駐妻・駐夫のキャリアの選択肢をざっくり紹介させていただきました。
夫婦共働きで、ともにキャリア志向であれば、もし現職を継続できない場合には、休職×副業や、退職×ブログ・執筆活動×資格勉強、など、いろいろな選択肢を組み合わせることで、充実した海外駐在ライフを送れることと思います。
これから海外駐在に帯同される方には、ぜひ参考にしてください。
フリーランスや副業を検討される方は、続いてビザの種類と社内規定を確認していきましょう。
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